業界の実際

●アクセサリーの流行廃り【3】

今まで二回にわたって「アクセサリー」の話をしてきたが、最後にグローブとアンダーのことなど…

グローブというのは、もしかしたらそう変わらないものではないかという感覚で見ている方が多いのではないかと思うが、意外と流行の変遷があったりする。
大昔、それこそ私が子供の頃は本当の革は高級品で庶民の子供は合成皮革(のようなもの)をあてがわれていた記憶がある。
当然私の家では合成皮革のグローブであった。
しかもその素材は今から考えるととんでもないクオリティで、薄くスライスしたスポンジにビニールの膜を貼り付けただけというシロモノ。
ワンシーズン使っていると2月頃には表面の膜が破れてきて、水は入り放題になったものだ。
これが80年代に入り、日本人も全体に豊かになってくると、だいぶ本革を使ったグローブが増えてきたように思う。
革のグローブといっても100%本革というものはまず無い。
側面や指の間(マチなどと呼ぶ)は合成皮革を使ったりする。こういった部位には本革は厚すぎるのだ。

スキーバブルもその絶頂を迎えようとする頃、グローブにも異変が起こっていた。
それまでの時代とは明らかに異なる傾向が見られ始めたのである。
まず、柄物のトータルコーディネートのためにウエアの柄の素材を使ったグローブが登場した。
多色をブロック状に配したウエアに合わせるには、同じくブロック上に色を切り替えたグローブが作られた。
今思えば何でそこまで必死にデザインを合わせる必要があるのか全く理解不能であるのだが、当時の方針であったので皆がんばって作ったのだ。

さらに、ウエアのアウトラインがだんだん大きくなっていくとグローブの形も幅が大きくなり、長さも長くなった。
手首から下がどんどん伸びて、10cm以上ウエアの袖口にかぶるものまで現れた。
ウエアの見た目のボリュームが大きくなったので、グローブもボリュームがないと釣り合いがとれないのである。
ただ、ここには間接的にスノーボードの影響があったと私は思っている。
スノーボードではストックなどつかむ必要がないため、指がきっちり曲がる必要性は薄い。
それよりも手が雪に触れる機会が多いので、とにかく濡れにくく暖かいという要素が重視されていた。
すると、手にぴったりフィットする形より少々大きめで余裕のあるもの方が、表面に水がしみこんでも中の手まで到達しにくいし暖かいというわけなのだ。
この傾向も、ウエアのアウトラインが小さくなるにつれ、元のぴったりフィットの方に戻っていった。
今では手首ぎりぎりしかない短めのグローブが出ていたりする。

日本国内では革のグローブは四国あたりの地場産業という性格があったが、形の変遷と並行してグローブの産地も他の産業同様海外に移っていった。
ただ、スキーヤーの中には「握り」の感覚にこだわりのある方もいるので、現在では価格としてはハイ&ローの二極時代になっている。
グローブについてsakanaya氏は語る。

「結局これは(グローブは)原点回帰の高級商品ととりあえず何でもいいと言う両極化になったような気がします。
ちょうど10年前位から中国やベトナム生産が主流となりましたが色々不良が出まして・・・・・
悲惨な思い出しかありません。インナーが抜けたりプラスチックが壊れたり・・・」

アンダーウエアの話をしよう。
21世紀の現在では機能性のあるもの、特にアンダーにおいては速乾性が不可欠であるとされている。
これは主に登山の世界から来たもので、冬の山で運動して汗をかき、それが冷えたりするとそれこそ低体温症で「死んでしまう」わけで、登山者にとっては非常にシリアスな問題なのであった。
そこに化学繊維の開発が進み、80年代に様々な素材が開発された。
天然素材でこのような厳しい環境での使用に耐えるのはウールくらいなもので、綿など最も雪山では危険な素材とされていたのだ。
ところが90年頃まではスキー業界でアンダーウエアといえば綿100%ばかりだった。
形は、タートルネックだったりジップアップのハイネックだったりしたが、素材は「汗を吸い取る」綿だったというわけだ。
まあ、ゲレンデにおいては少し行けば暖房の効いたレストハウスがあるわけで、冬山登山のような危険性は少ないのだが、やはり快適さは速乾性があったほうが格段に上なのだ。
速乾素材というのはポリエステルやポリプロピレンなどの繊維で、多層構造の編み組織を作ったもののことである。
化学繊維はつまるところプラスチックを細く引き伸ばしたもので水分を含むことは無い。
これで水分を外側に排出する構造の組織を作ると着用者の身体表面に水分は残らない。
P社においては夏用にポリエステルで「Cool&Dry」という素材を開発、現在も使用している。
これを元に裏側を毛羽立てて(起毛させるという)できたものが「Warm&Dry」と、まあネーミングはやや安直な気はするが、冬用の速乾素材である。
起毛させることで素材の厚みが増加し、含有空気量が増えて断熱効果が劇的に高まるのだ。
その辺の登場してきた時代についてsakanaya氏はこう語る。

「(綿のアンダーは)最盛期は万単位で作ってました。機能素材の走りは91-92の頃のインターマックスかな?
その後KappaでCool&Dryが出てそれを裏起毛したWarm&Dryに発展した頃、なぜこれをスキーで使わないの?と単純に疑問に思ってました。
事業部制って嫌ですね。そう思っていたのもつかの間、(スキーの)ACCでもWarm&Dryを作ることになりましたが、当然受注が付かずどれもこれもロット割れ。
何とか1品番をミニマムロットで作りました。」

当初はデザイン面の問題もあったとの事だが、そういった試行錯誤の果てにめでたく速乾素材はアンダーの主流になることができた。
今では保温機能や温度調節機能が盛り込まれてますます高機能化したもの(それなりに高額)が登場し、一方ではとにかく速乾性を備えた安価なものが作られている。
こちらも価格としてはハイ&ローの状況になっているのだ。

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