黒犬靴(ドーベルマン)教

21世紀のブーツスタンダードを決定したノルディカ・ドーベルマン

21世紀を目前にしてカービングがスキーのスタンダードとなった。
そしてブーツも、変革を迫られていたのだ。
21世紀になった現在、全ての真実を実現するためのスキーブーツはドーベルマンが基点となっている。

その出発点は、取ってつけた新機軸のような虚飾を排し、本当に必要な機能は何なのかということを一から妥協無く組み立てていったブーツである。
メーカーによれば「スキーヤーの足を包み込む第2の皮膚」となるべく構想されたという。
それゆえ、シェルの形状は可能な限り人間の足に近く、特にかかとからアキレス腱付近の絞られた形状は特徴的なものである。

カービングスキーがスタンダードになったことで、深くひざを入れた状態で大きく脚を傾ける傾向が強くなった。
このため、サイド(特に内側)への剛性を強くしながら前方にスムーズにひざが入る必要がある。
ただ単に前方にひざが入れば良いということではなく、シェル全体が粘りをもって動きを受け止めソールにはダイレクトにパワーが伝わる、というのがコンセプトだ。
粘りのあるフレックスは、「足型に忠実な絞込みと肉厚のシェルの絶妙な厚みのバランスによるもの」だ。
バックルのD環に成型パーツでなくワイヤーが使われているのは、動きに合わせてブーツ全体が複雑にねじれるのにしっかり追従するためなのである。
ドーベルマンソール

Photo: Benetton Japan

シェル内部、インナーが乗っかる面はかかと側がつま先側よりやや高くなっている。(左図赤い部分)
これはソール内部にゼッパまたはウェッジと呼ばれる部品があるのだが、その形状が絶妙に調整されているのだ。
メーカー担当者はこう語る…
「また、忘れてならないのが、そのバランスを助けるウェッジのウェーブです。
かかととつま先部分はフラットで両方に力が掛かるように、その段差を絶妙のバランスに仕立てています。また前後・左右にずれることなくシェルと一体にしたその設計は、何度も雪上テストを繰り返し、R&Dと選手が妥協することなく理想のレーシングブーツを突き詰めて行った結果だということを分かっていただきたいです。」

2000年に登場して以来、その優秀性は疑いの余地が無いことが明らかになっていった。
最初はいわゆる「選手用ブーツ」としての存在であったが、ほどなくカタログ外限定商品となり、さらにはカタログモデルとなった。
機能面に妥協したくないスキーヤーの支持を幅広く受けた形になったのだ。

その影響は、各社のブーツに見られる。
例えば…

●A社レーステック
05-06モデルのカタログ雑誌を見て欲しい。
「人間本来のくるぶし位置を無視したシェルヒンジの位置設定になっている…」
という表記があるが、まさに黒犬靴の特徴そのものである。
事の真偽は不明だが、A社が黒犬靴の金型を買って研究したという噂まで、私は聞いたことがある。

●R社
選手用ブーツのソールの特徴が黒犬靴に酷似しているという情報がある。

●T社
本国ノルディカを買収したためか、黒犬靴と共通したコンセプトのディアブロシリーズ発表。
選手用は同一のインナーを使用。

●H社
やはり足の形に近いタイトなシェル形状でレーシングブーツを開発。

●国産R社DATA
人間の足の形状を意識したタイトなシェル形状はどう見ても黒犬靴と同じ発想。
特にかかとからアキレス腱にかけてボリュームを絞る形状。

黒犬家の一族(05-06モデルバリエーション)

ドーベルマンWC150

●ドーベルマンWC150
Photo: Benetton Japan


市販のドーベルマン最強モデル。
ちなみにカタログにのっているのは日本だけである。
(インターナショナルのカタログはPROからのっている)
開発当初の純粋レーシングブーツ直系である。(というかそのまま)
初代とはインナーが異なるが他の部分の構造はまったく変わっていない。


ただし、ブランドロゴやバックルが年々派手になっていく。
さらに表面も途中からピカピカの光沢仕上げになった。
この点についてメーカー担当の方に聞いたところ、「シリーズ全体で数を売るため、より多くのスキーヤーに受ける必要がある」とのこと。
確かに初期型は光沢も無く、NORDICAのロゴも異様に小さかった。
いわば「知る人ぞ知る」「スキーオタクが喜ぶ」外観であった。


このブーツに足入れの良さを求めてはならない。
普通に「するり」と履きたい方は別のモデルを選ぶべきである。
実際、私は初期型を使っているが、一度ブーツが冷えてしまって15分ほど履けなかった経験がある。
現行モデルは基本的にはインナーだけを履いて紐を締め、その状態からシェルに押し込むようにできている。
サイズは欧州UK表示でハーフサイズは無い。インソールを各自で作ってフィットさせるため設定の必要がないものと思われる。
(通常、スキーブーツのハーフサイズはインソールの違いでしかないことが多い)


Sizes UK3-10
22.0〜29.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は95mmの設定。


05−06モデルでは、95mm幅でソフトフレックスバージョンが設定された。
●ドーベルマンWC100


Sizes UK3-8
22.0〜27.0cm(1cmきざみ)


完全カタログ外、WC160の内容はこちら

ドーベルマンプロ130

●ドーベルマンPRO130
Photo: Benetton Japan


一見、上のWC150と区別がつかないようだが、こちらは足の幅が3mm広くなっている。
フレックス表示も130と、気持ちソフトである。
足幅の広い日本人にはこの方が楽である。
特に長時間履き続けるスキーヤーにはお勧め。


ちなみにインナーはWC150と異なり紐締めではない。こちらのほうが初期型のインナーに近いような気がする。


Sizes UK3-10
22.0〜29.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は98mmの設定。


更にこの「PRO」シリーズは裾野が広く、110と100がラインナップされている。


●ドーベルマンPRO110
フレックス表示110で、すねで押さえやすいそうだ。
Sizes UK3-10
22.0〜29.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は98mm


●ドーベルマンPRO100
フレックス表示100と更にソフトで、カフ(上にかぶっているシェル)の高さを低くなっている。
足首を動かしやすい設定。
Sizes UK3-8
22.0〜27.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は98mm

ドーベルマンチーム70

●ドーベルマンTEAM70
Photo: Benetton Japan


ジュニア・女性・シニアレーサーも黒犬靴を使える!
というのが、このTEAM70のコンセプトである。


これで全年齢層のレーサー・技術志向スキーヤーに対応するラインナップになっている。


Sizes UK3-8
22.0〜27.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は98mm

ドーベルマンホットロッド

●ドーベルマン・ホットロッドトップフューエル
Photo: Benetton Japan


フレックスインデックスは130。
「オールマウンテン」と位置づけられたホット・ロッドシリーズのドーベルマン。


シェルカラーはシースルーのレッド。
かかとの部分にはショック吸収機構が入る。
フロントスポイラーは最初から取り付けられていて、いらなければ外す。


Sizes UK5-10
24.0〜29.0cm(1cmきざみ)
足型の幅は98mm


完全カタログ外のWC160の内容。

⇒ドーベルマンWC160を入手しました


もっと詳しい情報が欲しいという方は、ノルディカのWEBサイトに巡礼しましょう。

⇒国内サイト

⇒インターナショナルサイト

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