異端審問所(変わったグッズの試験)

ソフトブーツの試験・研究

20世紀から21世紀に変わる頃、スキー業界に「ソフトブーツ」なるものが発表された。
スキーユーザーにグッズに関する不満点をアンケートで調べると「ブーツが硬くてイヤだ」という意見が上位にきていたという。
当たりが柔らかくてまともに滑ることが出来れば一般ゲレンデ滑走では充分ではないかということなのだ。
そもそもは山スキー用にノルディカの黒犬靴より楽なブーツはないか?という発想で購入してみたものだが、色々試すうちに今まで気付かなかったことがいろいろあったなあと感じたのであった。


ちなみに最初に試した内容は「布教活動」の02年11月27日の記録に収録済み。

レイルスカンジウム

選択した機種はクナイスルのレイル・スカンジウムである。
ソフトブーツとはいえパワー伝達性能が高そうなものを選んでみた。
恐らくルーズな方が良い方はサロモン、ある程度しっかり滑りたいならこのクナイスルかロシニョールではないだろうか。


前にも書いたが、足型は決して幅の広い方とはいえない。
「ソフト」と言いながら、実はドーベルマン並に足がしびれた。
まずは快適性については期待したほどではない。
日本向けに幅がアレンジされていないと思われる。
快適さだけならば、ヘッドあたりのゲレンデスキーヤー向けの方が幅が広い分、上かもしれない。


これまた前にも書いたが、すねと足首の前方にシェルがないため膝を入れてもどこまでもいってしまう。
ブーツのベロを押すような操作は意味がないため、自分の足指でソールを押さえないとスキーのトップも押さえられない。

レイルスカンジウム_インナー

熱整形で個人個人に合わせるサーモインナー。
クナイスル得意のアイテムである。
スノーボードのブランド「ディーラックス」でも大々的に採用されている。


インナーの底は舟方で土踏まずもなく、整形インソールを入れないと足が落ち着かない。
ただし、私は全体があまりに窮屈なのでインソールの前半分をカットして内部ボリュームを稼いだ。
とりあえず「暖かい」インナーである。


付属のシューレースは期待したほど締められない。

レイル・スカンジウム

2002年の12月某日にこの試験は行った。


もともと想定していたツアー用のスキーと組み合わせて試してみる。
かぐらでの試験の時と同じように全体にルーズな感じが強い。
初級中級用の道具を使っているような感覚である。


ひざ程度の深さの新雪を滑ったがこれがものすごく疲れる。
姿勢を保持するのに力を使ってしまうのだ。
整地のゲレンデに入るとどうも板がズルズル落ち着かない。
もしかしたら板のエッジホールドがゆるいのかもしれないと思った。

黒犬靴

そこで、ブーツを黒犬靴にチェンジして同じコースを滑ってみた。
すると…
板のエッジホールドはやはりブリザードである。結構しっかりしたものだった。
レース用とまではいかないが、結構硬い雪でも使えそうな感じだ。
先ほどの新雪コースに入るとウソのように楽に滑ることが出来た。


剛性がないのはブーツだったのだ。
特にねじれに対する剛性がないためにエッジが逃げていくのである。


後日、同じ板にツアー用ビンディング(NAXO)をつけ、同じくツアー用ブーツ(SCARPA)の組み合わせで滑ってみたが、こちらの方がはるかにマシであった。
ツアー用スキー・ブーツの滑走記録はこちら


人にもよるだろうが、「ソフト」という名前につられてこの手のブーツを使うと、実は滑走時にかえって疲れるのであった。(歩行時は結構楽である)
結局、「ソフト」にすると滑走性能がかなり犠牲になるということだ。
やはりそんなにうまい話はないのである
逆に「ハード」な方が力のロスが少なく、小さい労力でスキーが反応してくれるため、滑っていて疲れないと思った。

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