説教の記録(211-220)


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211:2011年7月20日「なでしこジャパン世界一」

212:2011年9月13日「ビンディングと怪我」

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女子サッカーワールドカップで我が国日本代表「なでしこジャパン」が優勝しました。
ストレートに快挙です。
身体の大きな外人選手に対して、スピードと技で対抗し勝利した…まさに日本人好みの展開でありました。
やはり、日本人がスポーツで世界一を取るためには、体格上のハンデがほぼ必ず存在しますから、そうするしか道がないのも確かです。
また、サッカーというチーム競技であったこともプラスになっていたはずです。
個人種目よりチーム種目の方がスピードと技のシナジー効果が発揮できるというわけです。
今後は、他の国のチームは日本のこの戦い方を「潰す」べく戦法を変えてくるでしょう。
今後は勝つことが今まで以上に難しくなるはずです。
そういう意味では、「なでしこジャパン」は勝てるときにしっかり勝ったと言えます。


私は、パフォーマンスが絶対的に勝っているケース(スキーでいえば全盛期のステンマルクとか)でもない限り、「勝てる時期」というのはかなり限られているものだと考えています。
優れたアスリートにとってポテンシャルとして「勝てる時期」は巡ってきますが、そこで必ずしも勝てるとは限りません。
メンタルの問題で、実力を発揮できないこともあるでしょう。たまたま試合のときに、怪我を負っているかもしれません。


いずれにせよ、競技スポーツでは試合で結果を残さなければ記録には残りません。
「記憶に残れば良い」という意見もあるでしょうが、普通は世界一にでもならなければその種目に関心のない人達の記憶には残らないのです。
女子サッカーは勝てるときに勝ったことで、今後数十年にわたってプラスの影響を残すでしょう。
勝った姿を見て次の世代がまた世界を目指すのです。


資金的に非常に厳しいと言われていた女子サッカーは世界一を勝ち取りました。
アルペンの女子チームは聞くところによると、遠征資金も連盟は出さないという「名ばかりナショナルチーム」との事です。
勝利のためのグランドデザインを描いてきたサッカーと、そうでないスキーとの間の差はますます広がっていくようです。

先日、スキーメーカーの業界団体で開催している「S-B-Bセミナー」なるものに参加してきました。
これは、スキーが道具として成り立つための、S(スキー)B(ブーツ)B(ビンディング)の組み合わせに関する勉強会です。
実際は、ほとんどがビンディングの取扱いに関する内容です。


各社ビンディングの傾向を聞くと、現在は軽量化のためにプラスチック化が進み、ビンディングの取りつけも穴あけ不要、ビス打ちすらいらないというものも増えています。
とにかく、パチパチとはめ込んでいけばスキーが組みあがってしまい時代の流れを感じます。
ドリルで穴開けするのは、今時はレーシング専用かファットスキーくらいなものです。


さて、そのセミナーの中で印象に残ったのが「現在のビンディングは下腿(すね)の骨折を防止することを目的に開放機能が設計されているので、ひざじん帯の怪我に対してはこれを防ぐことができない」という話でした。
これは責任問題の話になった時、じん帯の怪我が発生してもビンディングのせいにすることはできないということです。


ちょうど9月10日発売のSジャーナル誌にじん帯の怪我に関する記事が掲載されていますが、多くの場合じん帯の損傷はポジションが遅れたところで横方向に力がかかると発生するようです。
そう言えば、ワールドカップなどでトップクラスの選手は日本人選手に比べてもじん帯の怪我が少ないような気がします。
これは、ポジションの確認など基本練習を重視するトレーニング環境が影響しているのではないでしょうか。


レーサーでなくとも怪我はしたくないのは当然です。
じん帯はビンディングが守れない以上、自分で守るしかありません。
根本的には、常に良いポジションをキープすることが怪我防止の対策と言えそうですので、やはりあらゆるスキーヤーはポジション保持のトレーニングは行うべきでありましょう。
本当の意味での「基礎スキー」というのはそういったことも含まれるべきではないかと思いますがいかがでしょう。

あっという間に2011年も過ぎていきました。3月の震災など、歴史に残る一年でした。
スキー場関係では、「パウダー!パウダー!」と強調されていたような気がします。
とにかく、色々なスキー場が「パウダー滑走」のコースを売り出しています。これからもしばらくはこの傾向は続くと思われます。
ところがこの「パウダー」というやつは麻薬的ともいうべき魅力があります。
スキー場から外れて本当の「山」に入り込み、あげくに遭難騒ぎが発生したりしています。
実際、新年早々長野県のスキー場で捜索騒ぎが起こっていました。


こうした話が出るとよく言われるのが「自己責任」という言葉です。
非常に悪質な使い方としては、「自己責任で行くのだから、スキー場の設定した規制ロープをくぐっても滑るよ…」というようなものです。
スキー場には管理責任がありますので、その敷地にいる以上、滑走者が単に自己責任で行動することは許されません。
当人は滑ることができるかもしれませんが、そのスキー場に来場している他の滑走者がまねをして滑走した結果事故が起こるかもしれません。
他の滑走者までの影響まで「自己責任」では負いきれませんので、スキー場の敷地内ではルールを守ってほしいという話になるわけです。


今回のようなエリア外での事例でいえば、スキー場の管理している範囲を出る場合は登山計画書などスキー場管理者に対して正式な宣言を行う必要があります。
さらに言えば、救助など必要なことにならないよう「自己責任で」必要な準備・装備をそろえなければなりません。
そうした手順も準備もなく「自己責任だから」と言って自然の中に分け入り、挙句に救助の必要な状況に至るというのは全く認識不足としか言いようがありません。

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