
スキーに関して、そこに投入されるテクノロジーはただ単に革新的であれば良いということではない。
そこにはスキーヤに対して真のイノーベーションを提供するという使命が課されている。
この部屋ではブリザードに搭載され、スキーヤーに栄光をもたらしたテクノロジーをご紹介する。
VIST製プレート
ブリザードには常に最新の発想で開発されたプレートが装備されていた。
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ステインフレックスタイプ
Photo: KiPO PRESS
99年ベイル世界選手権。
女子DHでブリザードが表彰台を独占したとき装備されていたのがこのプレート。
この頃から、ビスト社の名前がスキーヲタク達によって注目されるようになる。
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ステインフレックスというタイプをベースに調整されたプレートで、構造的にはダービーフレックスを始祖とする第一世代にあたる。
金属部分に空けられた穴で性能を調整していたのであろう。
ブリザード純正とビストブランドのものとでは明らかに穴の数と位置が異なっていた。
現在、このタイプはビストでも製造されていないようだ。
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空母タイプ(前期)
ずっと、ダービーフレックスみたいなプレートを見ていたので、こいつを見たときは正直驚いた。
プレートとスキー本体は全面的に密着しているものだという固定概念を吹っ飛ばしてしまった。
この頃のプレートを第二世代と定義しよう。
これはワールドカップエアーというタイプが元になっているようだ。
第一世代と比べると、スキー中央に空間があり、よりしなりやすくしているように見える。
カービング化の進展に伴い、スキーのしなりをより多く出そうという要求に応えた進化であろう。
02-03年モデルから登場.。
思わず私の頭に浮かんだのが「空母プレート」。
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空母タイプ(後期)
空母タイプの後期型
ワールドカップエアーのタイプを元にしているが、前期型よりもかっちりした乗り味になった。
このタイプは現在でも、各社のスキーに採用されている。
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04-05年モデルのバリエーション。
上から、
・GSカタログモデル+空母前期型
・GS選手用+マーカープレート
・GS選手用+空母後期型
空母タイプの前期→後期になったとき、私はトップの押さえが強くなったように感じた。
センターを多少しならせて前後を押さえるコンセプトになったと思う。
マーカーはセンターも押さえてしまうので、よりダイレクトな感覚になったという。脚力のある選手がハードバーンで使う仕様であろう。
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デュオタイプ
上記、空母プレートがGSに搭載されていたとき、SLにはこのプレートがついていた。
ワールドカップレースデュオというタイプが元になっている。一見すると黒くて四角いプラスチックが前後に張り付いているだけに見えなくもないが、素材の硬さなどにノウハウがあるのだろう。
前後に分かれているため、センターのしなりが感じられる。しかも、ターンが終わると板が走る感覚もある。単純だが不思議な効果のあるプレートである。
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デルリンタイプ
FISによるレースレギュレーションの変更により、第三世代のプレートが出現した。
07シーズンよりFISによってレーシングスキーのプレート高、ブーツのかかと高が規制され始め、プレート自体は従来より5mm薄くしなければならない。それに対するブリザードとビストの回答がこのプレートである。
デルリンという工業用プラスチックの台を前後に配し、間を金属のブリッジでつないでいる。
デルリン素材自体に、硬さとしなやかさ両方の性質を持たせたものといえる。
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07年、佐々木明が使用したスキーのプレート(上)
下は「一般」選手用。
(画像クリックで拡大表示)
板自体も厚みがあるが、プレートのデルリン台座にスリットを入れてしなりがより出るように改造してあった。台座の間隔も一般用よりも長く取っている。
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第二世代と第三世代の比較。全く発想が異なっていることがお分かりいただけるだろう。
(画像クリックで拡大表示)
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サーモ(Thermo)
温度変化に自動的に対応するというスキー史上唯一無二のシステム
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Photo: KiPO PRESS
温度変化による伸縮率が異なる2種類の金属を合わせ、雪温の変化に対して最適なベンド形状を作り出すシステム。要するに電気機械のサーモスタットの仕組みをスキーに搭載してみようというものである。平坦な面に板を置いたとき温度によってセンターの浮き具合が変化する。
教祖のあやふやな記憶によれば、低温時はベンドのそりが強くなりトップからテールまでしっかりエッジグリップするが、高温時には板がのそりが少なくなりエッジグリップがセンター部に集中、ゆるんだ雪にトップが引っかかりにくくなるというものだったと思う。
6年の開発期間を経て1980年より投入。約10年にわたって採用されていた。80年代、ブリザードがワールドカップのダウンヒルを席巻した時代、滑走性の高いスキーといえばブリザードのサーモスキーであったのだ。
左の画像は1984年キッツビューエルのダウンヒルでブリザードが1,2,3フィニッシュ表彰台を独占したときのもの。1位フランツ・クラマー(Franz
Klammer)、2位アーウイン・レシュ(Erwin Resch)、3位アントン・シュタイナー(Anton Steiner)
これは、ブリザードの歴史の中でも最も独創性の高い機能構造といえる。
ただ、それ自体はスキー内部に完全に内蔵されており「Thermo」という表示がなければユーザーへのアピールは無い。(もっとも、この時代は各社ともスキー表面に機能をデザインすることのなかった時代であった)
現在に至るまで同様の発想による機能は他メーカーからは出てきていない。
現行機種に関してはサーモゲル(ThermoGel)という振動吸収システムの名称に使われている。
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アブソーバー(Absorber)
1990年頃から隆盛を極めた外装型振動吸収機構
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Photo: KiPO PRESS
1990年〜
80年代も終盤になるとスキー業界内では振動吸収機能を外的に示すデザインが隆盛を極める。
印象としてはR社のV.A.S.に近い構造物で、ビンディング下に装着された。
サーモV20に搭載されペトラ・クロンベルガーの足元を支えた。(画像参照:V20の下の緑色の部分がアブソーバープレート。)
ついでに言えば、V20は当時教祖の足元も支えていた。
サイドカーブはR=30mであったが、当時はSL・GSのサイドカーブ傾向は過渡期にあったこともあり、まさにどちらの種目で使っても戦闘力が高かったと思う。
アブソーバー+フローター(ABSORBER + FLOATER)
1991年〜
上記のアブソーバーの前後に樹脂製の平たい部品がプラスされた。
クロンベルガー快進撃を引き続き支え続けた。
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フレックスチューニングアブソーバー
(Flex-Tuning Absorber =FTA)
プレート黎明期に既に登場していたフレックス特性を変化させられるという実に先進的な機構
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1993年ISPO(ミュンヘン国際スポーツ見本市)にて発表
ゼロX FTAに搭載。
大回転用のスキーにダービーフレックスなどプレートをかませることが一般化した時代、フレックスを最適に調整することが可能であるというプレートが発表された。
上の画像は教祖所蔵のスキー。ちなみにフレックス数値をトップ、センター、テールで指定できるという企画モノ商品であった。テール部にフレックスのデータが手書きの数字で記入されている。
横の画像向かって右側は機構部分のカバーがついた状態。左側は機構部分が露出している。
特にカバーが無くても作動には問題ないと思われるが、ともかくカバーが外れやすかった。
カバーが外れて内部のコイルスプリングがむき出しになった方がワイルドでかっこよいと思うがいかがであろうか?
プレート本体はカーボンの補強が入った(ように見える)樹脂製である。
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プレート後部にリンクアームが付属しており、このリンクに対してスプリングで前圧がかけられている。
プレート最後尾の砲弾型のパーツをまわすとスプリングを締めたり緩めたりできる。調整には大きめのプラスドライバーが必要。
主にテール側のフレックスが調整されるようだ。
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プレート前部。
プラスチック製のカバーがプレート前部を覆っている。
教祖もこれを使っていたが、微妙にテールの張りが変わった気がする。
ただし、板そのものの性質は基本的にはどっしりなめるように雪面を走るというものであった。
カービング時代になり、スキーのフレックス特性をプレートの性質で変えようとするものが多く見られるが、そのルーツとなった発想ではないかと考えることも出来る。
構造の面でも04年に仏R社が選手用のプレートにリンクアームを入れていたが、どこか共通する発想のように感じる。
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